Carbon EXを通じて環境負荷を数値化し、カーボンクレジットの創出を通じて福島復興に寄与
日本電計株式会社

課題
- 福島県の復興支援に対する持続可能な取り組みの模索
- 農業と計測技術の融合による環境負荷の軽減と持続可能な社会貢献
ソリューション
- J-クレジットの創出支援(水稲栽培による中干し期間の延長)
インパクト
- 計測技術を活かした農薬ゼロ栽培やメタンガス削減に貢献
- 8年間で1000t-CO2削減の見込み
- 地域の農家さんとコンソーシアムを立ち上げ、持続可能な農業モデルを構築
水田プロジェクトを通じて福島の復興を支援する

日本電計は、1950年に設立された電子計測機器の商社です。当社の主な事業は、電子計測機器の販売であり、パソコンやスマートフォン、自動車など、電気を使用するさまざまな製品の計測機器を取り揃えています。計測機器は、目に見えない電気信号や電波信号を観測でき、電気製品の研究や開発、生産には欠かせないモノ作りのマザーツールです。この計測機器を提供することが、私たちの重要な役割です。
当社は国内49拠点と海外51拠点から集まる豊富な情報を活用し、お客さまとのコミュニケーションを通じてニーズを正確に把握することで、最適な製品を提案しています。また、独立系商社であることから他社に依存せず幅広いニーズに柔軟に対応できる点も強みです。特に、近年では、電動化を推進する企業との取引が多く、電気計測のニーズが高まる中で、環境負荷軽減への対応がますます求められています。また、当社は商社であり、自社で工場を持っていないため、スコープ1やスコープ2の削減が難しいという現実も抱えています。
その中で、持続可能な社会があるから、私達がいる。企業が存続しつづける。これらの意味を考え、企業の社会的責任(CSR)の一環として東日本大震災後の福島県への復興支援を行うことを決定しました。震災より10年以上も経過している今でも、福島県産の農作物が流通で滞っている状況を目の当たりにし、農業を通じて復興に貢献したいと考えました。具体的には、地元の農業従事者と協力し、ロボットや計測技術を活用した農薬ゼロの栽培を行い、フードバンクを通して、美味しい新米をこども食堂に寄付するプロジェクトを立ち上げています。今後も企業理念のパーパスに挙げる「計測技術で社会に貢献」の具現化を模索していきます。
Carbon EXとの出会いがもたらした環境貢献の新たな一歩
Carbon EXを知ったのは、福島県で農業を推進する過程で進めていたJ-クレジットプロジェクトにおいて、環境負荷の数値化の必要性を感じたことがきっかけでした。このプロジェクトでは、水稲作付面積や場所、プロジェクト対象水田の排水特性、施用有機物、さらには中干し延長の証拠となる写真など、さまざまなデータを具体的に数値化することが求められていました。これらの情報は排出削減量の算定や認証機関への提出に不可欠であり、正確なデータがなければクレジット創出は不可能です。
このような中でCarbon EXの存在を知り、その支援を得ながらプロジェクトを進めることとしました。特に、Carbon EXの創出コンサルタントがプロジェクトに深く関わり、理想と現実を結びつける大切な役割を果たしてくれました。当初、当社の目標と実際のクレジット創出方法との間に大きなギャップを感じていましたが、専門知識を持つコンサルタントの支援により、実現可能なアプローチを見出すことができました。クレジット創出の知識が少なかった私たちにとって、伴走型の支援は極めて重要であったと実感しています。
また、CSR活動として農薬ゼロ栽培に取り組む中で、水田から多くのメタンガスが排出されることを知り、これを削減することでカーボンクレジットの創出が可能であることを学びました。そこで、福島県の水稲栽培における中干し期間を延長するJ-クレジットプロジェクト「Denkeiがつなぐ福島の水田中干期間の延長によるCH4削減プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトはビジネスを目的としておらず、削減したCO2排出量を金銭的な価値に転換させ、農業従事者の方々に還元することで、持続可能な発展に貢献できると考えました。しかし、J-クレジットの創出成果は目に見えにくいため、一部の農家さんからはその取り組みに疑問が寄せられることもありました。そこで、私たちは福島を何度も訪れ、直接意見を交わすことで信頼関係を築くことに注力しました。この対面でのコミュニケーションを通じて、J-クレジット創出のプロジェクトを順調に前進させることができました。
さらに、J-クレジット創出におけるグリーンウォッシュ対策として、当社は計測機器商社としての技術力を活かし、独自のスマートフォンアプリを開発しました。このアプリは農業従事者向けに提供され、すべて選択式の入力方式を採用することでヒューマンエラーを防止しています。今後、このアプリを福島県内で展開し、活用を広げていく予定です。


Carbon EXとともに、日本電計は福島県でのプロジェクトを通じて、CO2排出量の削減と地域農業の支援に取り組んでいきます。この8年間のプロジェクト期間中に、どれだけ多くの農業従事者が継続的に協力してくれるかが重要な課題ですが、地域の若い農業従事者と信頼関係を築きながら、持続可能な農業モデルを広げていきたいと考えています。
さらに、農作物の栽培過程でのメタンガス削減の取り組みを通じ、福島県を起点として全国の農業コミュニティにも広げられるモデルケースを構築することを目標としています。これにより、農業従事者の負担を軽減しつつ、持続可能な地域社会の発展に貢献していくことを目指しています。
企業プロフィール

日本電計株式会社
業種:電子計測機器商社
社員数:連結 1,195名(2024年9月時点)
所在地:東京都台東区
1950年に電子計測機器の専門商社として設立以来、70余年に及ぶ歴史の中で常に技術革新に求められる不可欠な計測機器とサービスを提供し、独立系専門商社としてお客様やメーカー様の信頼を築いてきました。テクニカル商社への転身を目指して国内49拠点、海外は14の国と地域に51拠点のネットワークを広げ、グローバルにお客様をサポートしています。システム製品・検査機器・試験装置・受託試験・規格試験への取組・計測技術セミナーの開催など市場ニーズの対応範囲を拡充させています。「計測技術で社会に貢献」をパーパスとする企業理念のもと、これからも事業を通じて弊社に関わる皆様への貢献と共に企業価値の向上を図ります。
※掲載内容は取材当時のものです。
担当者コメント

木村 進一
この度は日本電計が立ち上げた「ふくしま緑のコンソーシアム」によるJ-クレジット創出における創出パートナーとして、弊社を起用いただきありがとうございます。無事にプロジェクト登録が完了し、現在1回目のクレジット認証に向けたモニタリング作業を実施しております。引き続き、本プロジェクトが脱炭素への貢献のみならず、地域貢献や復興支援となるよう、様々な角度から全力でご支援させていただきます。